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〔第 74 号〕

2011/02/01

 厳寒である。例年より重ね着をする「着更着」(きさらぎ)の機会が増え、なるほど、「如月」とはこういうことなのかと身にしみた▼特に1月は、豪雪で苦労された地方も多いことだろう。幻想的なイメージがある反面、どうかすると厄介な存在である雪を、最近は生活の利便性を高める手段として用いる試みが広まってきた。「利雪」である▼観光資源としてではなく、近年注目を集めているのは、雪を大きな空間に閉じ込め、その中で生じた冷気で建物や農作物を冷やすという着想だ。なかなかどうして、人間はたくましい▼雪の冷熱で保管し、冷めても美味しいという「雪中米」は、そんな利雪の産物として有名で、聞けば、その誕生には雪国の地元大学の叡智が深く関わっているという。いま必要なのはそんな発想の転換だ▼就職の話題一辺倒となった教育界に、またも衝撃が走った。「内定率68・8%」――。今春卒業見込みの大学生の就職内定率だ。この寒空に、なお霧が立ち込めて進路の視界が不良というのでは、立ちすくむ人も少なくないだろう。利雪ではないが、冬に学んだその知恵と経験を、春からの学生支援にも役立たせたい。そんなたくましさが求められている。

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