トップページ > 企業人インタビュー > 第91号 埼玉りそな銀行 上条正仁氏

前の記事 | 次の記事


第91号 埼玉りそな銀行 上条正仁氏

2013/02/13

 今回ご登場いただくのは、現在のグループの形になって10年の節目を迎える埼玉りそな銀行の上條正仁社長だ。 
 海外支店を含めさまざまな部署を経験され、改革を断行し続けてきた上條氏に、ホスト役の女子栄養大学常任理事・染谷忠彦氏が若者に向けた提言などを聞いた。



■活躍の場が広い銀行員の仕事
染谷 学生時代のエピソードをご披露いただけますか。
上條 私はちょうど、世の中を大きく変えた「団塊世代」の一つ下の代に当たります。だから
というわけでもないのでしょうが、学生時代は青春を謳歌できたという印象です。 
就職を意識したのは大学4年生になってからで、当時は昭和48年に起きたオイルショックの影響もあり就職難でしたが、私は現在の埼玉りそなの前身行である協和銀行に入社することができました。
染谷 銀行員を目指したのはなぜですか?
上條 一つには語学が好きで国際的な仕事をしたいという思いがあったからです。現に35年のキャリアのうち10年間は国際部門に配属されニューヨークとロンドンで仕事をすることができました。加えてアジア全土を担当する本部の部署も経験しています。銀行員という仕事は海外の方とはもちろんですが、若い頃から企業経営者など幅広い分野の方々と接する機会が多いのも魅力でしょう。
染谷 新入社員についてどのような印象をお持ちですか?
上條 問題意識が高く、論理的なコミュニケーション能力を備えている方が多く素晴らしい人
材が揃っているというのが感想です。特に女性は優秀で活躍の場も広がっています。近い将来は、6対4程度の比率で女性が支店長として活躍できる場を増やしていきたい。現在はそのための育成に力をいれています。


■自立(律)心を育てよう
染谷 一般社員とふれ合う機会を創出していると聞きました。
上條 エリアごとに社員を集めて『タウンミーティング』という意見交換の場を設定しています。 
 若手ともよく話しますが、みんなトップの眼前だからということもあるのでしょうが、素朴に答えて欲しいようなことでも立派な答えをしようとする傾向があるようです。本音を隠すために仮面をかぶり、面接の達人みたいになっているところが見受けられますが、素の自分でも社会人として堂々と務まるように感受性や発想力を育てて欲しいと、社員にはよく伝えています。
染谷 では、これからの未来を担う若い人たちに求められることは何だとお考えですか?
上條 自分で考えて判断し、行動できる力が求められていると思います。現代的な若い人たちは、課題を示され行動の枠を与えられるとその中ではきちんと動くことはできます。けれども、そこからはみ出すことをしない。自分でこうしたい、ああなりたいという主張が少な過ぎ
る。自分で考えるということは、結果としてそれを表現することで、自らの主張にもつながります。ただ従順になるのではなく、好奇心や創造力を持ち、枠を飛び越えたもっと自由な主張をして欲しいと思います。
 あるスポーツ選手に、伸びる選手と伸びない選手の違いを聞くと「素直で負けず嫌いであること」と言っていましたが、これは社会人でも同様でしょう。人の言葉は受け入れつつも言われたことをそのままやるのではなく、誰よりもいいパフォーマンスを示したいという気概を持
つことが仕事をする上ではとても重要であると思います。


■どんな時も「気づく」人に
染谷 教育側に対するご意見を頂戴できますか。
上條 日本の教育はゼロからていねいに指導しますが、それが必ずしも良いとは限りません。子どもたちにもっと自分で考えさせる教育をしていただきたいと思います。また、この不景気な世の中にあって、ぜひとも将来への希望や期待を子どもたちに抱かせていただきたい。 
 入社3年目の若手が、タウンミーティングの場で高校時代にサッカー部顧問の先生に言われ続けた言葉を紹介してくれたことがあります。「気づく人間になれ」という短いフレーズでし
たが、大変感銘を受けました。サッカーのゲーム中、味方や敵の動き、監督の考えなどに敏感になることだけを意味しているのではなく、その趣旨は社会のあらゆる場面に通底するのではないかと思います。そういったシンプルでも重みのある言葉を生徒に伝え続けた顧問の方は、素晴らしい教育をされているなと感動しました。
染谷 最後にメッセージを。
上條 就職は企業が人を選ぶのと同時に、人が企業を選ぶことでもありますから、そういう誇りを持てるようにしっかりと自分自身というものを持って欲しい。自分なりの信念に基づいて挑むことがキャリアを形成していく上でとても重要になります。ぜひそういった気概を持っ
てノビノビとした学校生活を送ってください。

前の記事 | 次の記事