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[第95号]

2013/05/14

季節は八十八夜を過ぎ、すっかり過ごしやすい陽気の毎日となった。八十八夜は、立春から数えて88日目を指す。〝八十八〞という字を組み合わせると〝米〞という字になることからも分かるように、この日は先人の中でも特別重要な日とされていたのだろう▼「夏も近づく八十八夜~♪」から始まる有名な唱歌から、お茶摘みを連想する人は少なくない。八十八夜は霜がおりなくなる安定した気候の訪れる時期で、茶葉を摘むのに最適な夏へ移る境目の日だと認識されていたと聞く。「八十八夜の別れ霜」という言葉もある。春に早期の種まきを行うと遅霜が降り、育ててきた茶葉が台無しになるため、「暖かくなっても油断してはいけない」という戒めである▼栽培の難しい茶葉は高級品で、とりわけ八十八夜に摘み取られるお茶は、不老長寿の縁起物の新茶として珍重された。昔の農家は藁を敷き、霜を防いで毎年同じ時期に月の満ち欠けから判断して大事に茶葉を摘み取っていた。庶民に親しまれるようになったのは大正時代からだとか▼翻って、大学生の就職活動解禁時期がまたも変更されようとしている。茶葉と違い、どの時期が最適であるのか判断が難しいということなのだろう。いずれにしても願うのは、学生たちにとって解禁日が新緑の萌えるこの季節のような、キラキラと輝く世界へ踏み出す第一歩になって欲しいということだ。

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