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連載第4回 大学改革を問い直す
2014/11/10
連載 大学改革を問い直す
第4回 大学進学率格差と私立大学
藤田英典
大学教育のユニバーサル化が言われて久しいが、ようやく日本もその段階に入った。短大・高専を含む高等教育機関進学率は過年度卒を含めて1970 年代後半から50%程度の水準で推移し、80年代後半以降上昇し始め2014 年は80% に達した。また、大学進学率が50%を越えたのは10年度からで、14年度は51・5%となった。この上昇は好ましいことだが、特に次の3点で改善・充実を図るべき政策課題があると言える。第1は地域格差や家計状況による格差、第2は奨学金政策も含めて高等教育への公的投資が少ないこと、第3はユニバーサル段階の大学教育の在り方である。
地域格差については、14年度の現役大学進学率(全国48%)で見ると(以下、四捨五入)、東京63%、京都59%、神奈川56%に対し、35%程度以下が10県あり、うち1県は29%でしかない。家計構造や生活スタイル等の違いもあるから大学進学が重要とは一概に言えないが、この格差は、家計状況格差も重なることを考慮すると、検討し適切に対処すべき問題であろう。
家計状況格差については、日本学生支援機構の『2010 年度学生生活調査』によれば、自宅通学の場合4年間の教育費は、国公立で約270 万円、私立で約530 万円かかるから、特に国公立入学が難しい学力層を中心に進学断念などを選ぶ原因にもなるであろう。実際、同調査によれば、大学生の家計収入別割合は、年収300 万円以下9% に対し、1000 万円以上23%、1000 万円以上を含む700 万円以上57%となっている。また、文科省の13年度委託調査『専修学校における生徒・学生支援等に関する基礎調査』によれば、年収別の大学進学予定は、大学計では400 万円以下55%、625 〜800 万円69%、1050 万円以上85%である。また、国公立ではそれぞれ16%、18%、17%であるのに対し、私大では38%、44%、57%となっている。つまり、年収が高いほど私大進学予定者は多くなるが、国公立は合格可能性も重要な判断基準になるためか年収格差はほとんど見られない。
次に高等教育費の公私負担割合を見ると、私大学生の多い日本(77%)や韓国(82%)では私費負担が多く、公費割合が少ない。OECD の『Educationata Glance2012』によれば、大学進学率(文科省調整)と高等教育費の公費割合(カッコ内)は、オーストラリア96%(45%)、スウェーデン76%(90%)、フィンランド68%(96%)、アメリカ74%(45%)に対し、日本51%(35%)、韓国71%(26%)となっている。
以上を踏まえるなら、知識基盤社会や生涯学習社会と言われる時代にあって、大学進学率の向上と奨学金の拡充を図ることが重要であろう。これは、大学教育機会の地域格差の改善という点でも地域経済・社会の活性化という点でも重要だと言える。
第1に、先に見たように、私大進学の場合、4年間の教育費は500 万円強であるが、自宅外通学の場合の住居費等も含めるとその額はさらに増え、全学生の総額は一千数百億円にもなる。これは家計等による消費支出でもあるため、消費の拡大に寄与していることになる。第2に、近年、大学の社会貢献・地域貢献の重要性が言われ、大半の大学では貢献度向上に努めている。地元企業への技術・製品開発や事業展開への協力、地域のイベント等への参加・協力、学校支援ボランティアなども盛んになっている。第3に、そうした活動は、実地体験型・社会参加型の学習、自己肯定感等の向上という点でも、学びの充実に寄与している。
14年度現在の大学数は781 校、私立は603 校で全体の77%。その点で私立大学が果たしている役割は大きい。前述の3点のメリットに加えて、地域格差の解消と地域の活性化や民度の向上を図るためにも質量とも高等教育の充実が望まれる。
第4回 大学進学率格差と私立大学
藤田英典
大学教育のユニバーサル化が言われて久しいが、ようやく日本もその段階に入った。短大・高専を含む高等教育機関進学率は過年度卒を含めて1970 年代後半から50%程度の水準で推移し、80年代後半以降上昇し始め2014 年は80% に達した。また、大学進学率が50%を越えたのは10年度からで、14年度は51・5%となった。この上昇は好ましいことだが、特に次の3点で改善・充実を図るべき政策課題があると言える。第1は地域格差や家計状況による格差、第2は奨学金政策も含めて高等教育への公的投資が少ないこと、第3はユニバーサル段階の大学教育の在り方である。
地域格差については、14年度の現役大学進学率(全国48%)で見ると(以下、四捨五入)、東京63%、京都59%、神奈川56%に対し、35%程度以下が10県あり、うち1県は29%でしかない。家計構造や生活スタイル等の違いもあるから大学進学が重要とは一概に言えないが、この格差は、家計状況格差も重なることを考慮すると、検討し適切に対処すべき問題であろう。
家計状況格差については、日本学生支援機構の『2010 年度学生生活調査』によれば、自宅通学の場合4年間の教育費は、国公立で約270 万円、私立で約530 万円かかるから、特に国公立入学が難しい学力層を中心に進学断念などを選ぶ原因にもなるであろう。実際、同調査によれば、大学生の家計収入別割合は、年収300 万円以下9% に対し、1000 万円以上23%、1000 万円以上を含む700 万円以上57%となっている。また、文科省の13年度委託調査『専修学校における生徒・学生支援等に関する基礎調査』によれば、年収別の大学進学予定は、大学計では400 万円以下55%、625 〜800 万円69%、1050 万円以上85%である。また、国公立ではそれぞれ16%、18%、17%であるのに対し、私大では38%、44%、57%となっている。つまり、年収が高いほど私大進学予定者は多くなるが、国公立は合格可能性も重要な判断基準になるためか年収格差はほとんど見られない。
次に高等教育費の公私負担割合を見ると、私大学生の多い日本(77%)や韓国(82%)では私費負担が多く、公費割合が少ない。OECD の『Educationata Glance2012』によれば、大学進学率(文科省調整)と高等教育費の公費割合(カッコ内)は、オーストラリア96%(45%)、スウェーデン76%(90%)、フィンランド68%(96%)、アメリカ74%(45%)に対し、日本51%(35%)、韓国71%(26%)となっている。
以上を踏まえるなら、知識基盤社会や生涯学習社会と言われる時代にあって、大学進学率の向上と奨学金の拡充を図ることが重要であろう。これは、大学教育機会の地域格差の改善という点でも地域経済・社会の活性化という点でも重要だと言える。
第1に、先に見たように、私大進学の場合、4年間の教育費は500 万円強であるが、自宅外通学の場合の住居費等も含めるとその額はさらに増え、全学生の総額は一千数百億円にもなる。これは家計等による消費支出でもあるため、消費の拡大に寄与していることになる。第2に、近年、大学の社会貢献・地域貢献の重要性が言われ、大半の大学では貢献度向上に努めている。地元企業への技術・製品開発や事業展開への協力、地域のイベント等への参加・協力、学校支援ボランティアなども盛んになっている。第3に、そうした活動は、実地体験型・社会参加型の学習、自己肯定感等の向上という点でも、学びの充実に寄与している。
14年度現在の大学数は781 校、私立は603 校で全体の77%。その点で私立大学が果たしている役割は大きい。前述の3点のメリットに加えて、地域格差の解消と地域の活性化や民度の向上を図るためにも質量とも高等教育の充実が望まれる。
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