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【第1号】

2000/04/20

2000年度がスタートした。教育改革が進められる中で、小渕前首相の私的諮問機関として発足した教育改革国民会議が3月下旬スタート。小渕前首相から森新首相へと引き継がれ、引き続き会議は続けられる。

G8の教育担当大臣が一堂に介しての教育サミットが開催。大手予備校が大学入試問題の作成をビジネスとして始めると発表。石原東京都知事は、都立大学、短大の統合を進めるとの私的コメントを発表。一方で中学生の5千万円を超える恐喝事件発生。フリーター問題の深刻化等々、なにやら「教育」の周囲が慌ただしくなってきた。

教育改革国民会議では「教育の社会病理現象を指摘する委員が多く、倫理や道徳についての分科会もつくる」(江崎座長)ことになるらしい。

どのような切り口で議論がなされるのか非常に興味深いところだが、人の心、内面の問題には、どうしても社会の状況、環境が関わってくる。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長は、本紙インタビューで「学生にはインセンティブ(動機)を与えること が大切」と語っておられるが、ふと見廻すと警察の不祥事や保険金目当ての殺人事件、長引く不況での雇用不安、政治の世界も相変わらずという状況。若い人たちにインセンティブを与えることを模索しなければならない。

しかし、悲観してばかりいてもしようがない。よく見ると、自分のやりたいことに打ち込んでいる人がいる。自分のやりたいことに気づいている人がいる。そして喜びを感じている人がいる。

今、職業教育の重要性がいわれているが、もしかするとそこに何かありそうだ。漠然としたものではなくて、社会を構成する仕事、職業に対する再認識、深い理解が生まれることによって、一人ひとりと社会の関わりが見えてくるのかも知れない。

自分の好きなこと、得意なこと、やりたいことが社会の中で生かされ生きることができるとしたら、誰が自らそれを拒むだろう。

慶應SFCがAO試験を導入して10年。多くの大学、短大が導入し始めているが、学生の個性と大学、短大の特徴とのベストマッチングを目指すものという理念を失わないでいただきたい。生徒、学生のできること、やりたいことを続けられる場所があるという可能性を示すことが、今求められていることであり、AO試験の理念の実現こそが、そのための足がかりになるといえるのではないだろうか。

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