【第24号】
2003/12/25
二〇〇四年申年が幕を開ける。申年は、激動時代を演出する出来事がめだつ。過去を振り返ってみると、古くは五・一五事件、三億円事件、日ソ国交回復等々。最も近い一九九二年は今回のイラク自衛隊派遣に通じるPKO協力法案の成立。毛利衛氏が日本人初の宇宙飛行士としてスペースシャトルに乗船した年でもあった。
二〇〇四年の教育界の注目は、国立大学の独立行政法人化である。本紙の独自アンケート調査では、公立大でも六割が法人化に賛成し、「自立や改革のよいチャンス」と捉えている。しかし、個々の大学には解決すべき問題が山積だ。
単に法人化だけで改革ができるものではないだろう。「明日を背負う若者」をどのように育てるかという課題もある。それに対する答えは、一朝一夕で得られるものではないはずだ。なぜなら、そこには目に見えにくい別の課題が網羅されているからだ。
必要なのは、大学における学力や能力を養成するシステムの改革に留まらない。そこで採用されるシステムは、小・中・高にも波及し、同時に「生きる力」を身につけるという課題が寄り添っている。
将来の目標を持てない若者、目的なくフリーターになる青少年など、教育の抱える課題は広く深い。大学関係者だけではなく、教師の立場にある人、子供をもつ保護者、そしてすべての国民が、教育に対して大きな関心を寄せる時である。教育のあるべき姿を学校で、家庭でそれぞれが模索すべき時である。
二〇〇〇年から始まった、大学に対する第三者評価では、産学連携は大半の大学で有効とされたが、教養教育には「改善の必要あり」とされた大学が三十%に及んだ。そこには、時代に必要な知識・技術を養成するとともに、時代を超えた人間としての教育もまた必要なことが示されている。
文科省は、知育・徳育・体育・食育を重視した「人間力向上のための教育改革」を加速させると言う。存続をかけた学校経営も必要だが、学生のモチベーションや意欲を向上させ、それらを満たすカリキュラムの提供に注力してほしい。多様で良質な教育こそが、これからの競争の鍵を握る。
教育の見直し、大学改革についての論議は、今に始まったわけではない。けれども今までより一層、国民にわかりやすい改革が求められる節目の年となることは、間違いない。