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【第29号】

2004/10/25

埼玉県の山中で十月十二日、七人の若い男女らが、車の中で死んでいるのが発見された。インターネットの自殺サイトを通じて仲間を募ったといわれている。その若者の中には、進学や就職で悩んでいた者もいるといわれている。

平成十六年度版「労働経済白書」では、学校に通わず、働かず、職業訓練も受けない無業者の若者が五十二万人と、今回の調査で初めて報告された。今までの雇用問題ではフリーターが注目されてきたが、新たにニートと呼ばれる若年無業者の存在が浮かび上がってきた。自分で働かなくても、親の経済力で生活ができてしまうので、やがては働く意欲をなくしてしまう若者が増えているのだ。むしろ彼らは、「働かない」というよりも、「働けない」ある種ひきこもり的な要素を持つ。

加えて、以下のような若者たちの存在も無視できない状態にある。教育シンクタンク「ベネッセ未来教育センター」の意識調査で、中学生の八割は、親との関係は円満だと回答した。一見すると、望ましい回答であるが、同センターは、この年代に特有の反抗期の傾向が失われていると懸念を示した。反抗期は、子どもが親や家庭から精神的に自立する上で不可欠なもの。その反抗期がなく、彼らが親に依存したままの状態では、今後の精神的自立に障害をきたすと危機感をうかがわせた。

これら集団自殺をした若者、ニートの若者、反抗期を失う可能性のある中学生に共通するのは、自立できずに、何をしたらいいのかわからずにいることだろう。

従来には考えられない事態が起こってきた。今までの経験で若者たちを考えられなくなってきている。過去の経験からだけでなく、彼らの目線にたって、なぜ彼らが意欲をもてないのか、自立できないのかということを理解すべきだろう。

ここ最近では、新たな動きもある。「よい人生とは何か」と学門的に考えるようになってきたことだ。法政大学が昨年四月、学部としては日本で初となる『キャリアデザイン学部』を開設した。他大学・短大でも、キャリアに関する学科を設置するところは増えてきた。就職関連の部署が、「キャリアセンター」などと名称変更するのも目立つ。

たった一度の人生。できれば幸せに過ごしたい。高等教育機関は、就職技法を教えるのではなく、人生設計を支援する場に向かっていくことを望む。

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