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【第30号】

2004/12/25

二〇〇五年の干支は「酉」。中国で酉年は、変革が多い年という。日本の歴史を振り返っても、大きな変革が起こっている。辛酉の年に、初代神武天皇が即位したという伝説。一九四五年にポツダム宣言を受け入れたのも酉年。ちょうど六十年が経過し、還暦を迎える二〇〇五年に、いったい何が起きるだろうか。教育についての変革、改革の予兆はある。

文部科学相は、「日本の学力は、トップレベルとはいえず低下傾向にある」と発言した。二つの国際学力調査(OECD、IEA)の結果を受けてのコメントである。

学力低下の問題の対策として、政府は「ゆとり教育」に対する強い批判から、方向転換をしようとする構えだ。授業時間の増加や、生徒の競争意識を高めようと、全国一斉学力テストの導入を視野に入れている。

学力テストを導入すれば、他人より一点でも多く取りたいと、競争力を上げることはできるだろう。例えば、OECDの調査で上位の成績をおさめた韓国。しかし、過度の競争により、大学修学能力試験で集団カンニング事件が起きたことも忘れてはならない。耳塚寛明お茶の水女子大学教授は、「テスト勉強をさせることと、意欲を向上させることは別問題」と指摘する。学力低下の原因を「ゆとり教育」に結びつける報道が多いが、問題は、「競争させろ」、「勉強時間を増やせ」などという短絡的な問題ではない。

意欲を持たせるための、教育改革とは何か。本来、勉強をすることは楽しいことのはず。「何かがわかる」、「何かができるようになる」うれしさを伝えられないと、子どもたちの勉強する意欲は、上がらないのではないか。

二〇〇四年を象徴する漢字は「災」であったが、次の年のためにも、「災い転じて福となす」と思えるくらいの心の「ゆとり」を持ちたい。

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