【第34号】
2005/08/25
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」とは道元禅師のことば。自然の光景を歌いながら、季節にあったシンプルな物事の本来の姿というものを思い起こさせる。しかし近頃は、物事の本質がなかなか見えにくくなってきている。
小泉改革の本丸とも位置づけられる郵政民営化。その法案が8月上旬、参議院で否決され、小泉首相は衆議院を解散した。政策に反対した人たちは、対立候補を立てられたりするなど、事態は一転二転し、複雑でわかりにくくなってきている。
民営化法案に反対派の議員の理由には、民営化後の株式の持合を問題視するなど、さまざまなものがあるが、「既得権」を失うからということもあるようだ。これが物事を難しくしている。この既得権を持つ人たちが自分たちの権利を守ろうと、さまざまな改革を妨害する。これは歴史的に見てもそう。NTT解体もしかり、ほかにも特殊法人改革、金融改革など──。
昨年、プロ野球再編問題で、選手会は、ファンの声を無視する保守的なオーナーに反発し、日本プロ野球史上初のストライキを決行した。ストライキによるファン離れも危惧されたが、選手会はファンの要望でもあったセ・パ交流戦を実現させ、野球場に多くのファンを取り戻した。ファンと選手が一致団結した瞬間だった。会社も、選手も、ファンも、「Win- Winの関係」になった一つの例だ。これが本来あるべき姿だろう。
改革を進めるには、誰のための改革かを考えることが重要。改革している間に、一番大事なことを忘れてしまってはいないか。大学は学生のために、教育をよくするための改革を行うはず。18歳人口の減少、大学の定員割れなどを迎えて、それらは厳しい課題であるのは間違いない。経営の面、教育・研究の面、大学にはいろいろな側面がある。定員を確保することも大学にとっては大事なことであるが、学生の視点を忘れてはいけない。
高等教育が大衆化した現代。それぞれの大学にあった本来の姿を見つけ出し、学生の声をすくい上げ、学生が喜ぶ真の改革が期待される。