トップページ > 大学ノート > 【第40号】

前の記事 | 次の記事

【第40号】

2006/08/25

「カキーン」という金属バットの音が聞こえなくなった。夏の風物詩、甲子園の2日間にわたる37年ぶりの決勝再試合に幕が下りた。壮絶な試合を制したのは初優勝の早稲田実業高校だった。

守備交代に全力疾走する選手、ベンチ入りができなくてもスタンドから応援する選手、歓喜して涙を流す女子生徒の姿など、高校野球にはそこにあるすべてを魅了してしまうものがある。中でも、勝った高校だけに与えられる特権として、そこで流れる校歌を歌う選手の姿が印象的だ。

校歌を歌う選手の頭には一戦一戦の闘いの思いすべてが凝縮されている。そして、その校歌には、選手だけでなく、応援していた人すべてを一致団結させる不思議な力を持つ。

校歌を歌う選手を見ているときに、東京大学には校歌がないことをふと思い出した。応援歌『ただ一つ』と、運動会歌『大空と』が?東京大学の歌?として公認されているだけ。大学が帝国大学しか存在しない時代は、スクール・アイデンティティを必要としなかったという。700校を超える現在では、どのくらいの学生が校歌を歌えるのだろうか。

少子化時代を迎え、大学には厳しい風が吹く中で、大学は原点に戻ろうという風潮が強い。それならば帰属意識を高める校歌を浸透させることから始めることもいいのではないか。高校野球から気づかされた夏だった。

前の記事 | 次の記事