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【第44号】

2007/04/25

渡辺淳一さんの『鈍感力』(集英社)という本がベストセラーとなっている。小泉前首相も「鈍感力が大事」という発言をしていた。現在、世の中にあふれかえっている「○○力」というラインアップに新たな力が加わった。

コミュニケーションを円滑にするために、たまには鈍感になることも技術としては必要なこと。意識をしているなら「鈍感力」であろうが、何も考えずに鈍感でいるのは、ただの無神経だろう。

東京大学で行われた、コミュニケーション能力に関するシンポジウムを思い出した。「コミュニケーション能力」という言葉が氾濫しているわりに、どのような能力がコミュニケーション能力なのか、そして何が問題かということを議論していた。司会の苅谷剛彦・東大教授は「何も考えないまま、コミュニケーション能力という言葉を受け入れてしまった社会が問題ではないか」と指摘した。社会全体が鈍感になってしまったのかも知れない。

「大学全入」と聞いて、すぐ大学に入りやすくなったと、鈍感になってはいけない。「大学全入」となり、大学進学が当然のようになってきた現在、単なる大卒は価値がない。卒業後、どのような力が付いたかで差別化される。

大学を卒業するまでに、ただ単に鈍感でいるだけでは意味がない。「鈍感」と「鈍感力」の違いは、大学での過ごし方で分かれる。

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